「理学療法士の質が落ちている」
最近、そういった言葉をよく聞きませんか?
理学療法士及び作業療法士法が昭和40年(1965年)に公布され、50年以上経過したわけです。
いまでは年間約1万人の理学療法士が誕生しており、「質」はともかく「量」は右肩上がりですね。
数十年前の理学療法士の質は知りませんが、この御時世で理学療法士が「勉強しない、質が落ちている」と言われる理由について考えてみました。
注意ポイント
この記事はあくまでも私の体験談に基づく主観、私見です。
すべての理学療法士に当てはまるワケではありません。
そもそも理学療法士の「質」とは
質が落ちているという表現はいつ、誰が言い始めたことなのか詳細は不明です。
そもそもの疑問なんですが、「質」の焦点はどこなんでしょうか。
- 理学療法士の「向上心」?
- それぞれの持っている「知識・技術」?
- 患者と真摯に向き合う「態度」?
しっくりとイメージと当てはまりそうなのは「知識・技術」かと想像していますが、もしそうであれば「質」は上がっているのでは?とも思います。
50年前と現在で比較すれば明らかにエビデンスのある治療方法は増えているはずです。
質が落ちているはずがないんですよね・・・。
じゃあ、なんだ?って話しですが、次に思い当たるのは「向上心の低さ」
ただ、これに関しては若手理学療法士はわりと向上心が高い印象があります。

たとえば、勉強しない理学療法士が増えているという実情が、果たして本当にあるのかみたいな研究とかあると面白いですね。
現役理学療法士の年代別での1日あたりの勉強時間の比較とか。
統計的に数字でしっかり結果を示してくれたら、「質」の低下を嘆いている方々の認識も変わるかもしれません。
もし若手理学療法士の勉強時間が予測よりも確保されている現状があれば、それは勉強方法(教わり方など)に問題があるかもしれないですし。
質が問われているとはいえ、意外と若手理学療法士より中堅〜ベテランの理学療法士の方が勉強時間は少ないかもしれないですよね(想像)。
私のリサーチ不足かもしれません。
もし、そのような研究・論文があれば教えてください。
余談はこの辺にしておいて、実際に私の体験をもとに「勉強する理学療法士」と「勉強しない理学療法士」の頭の中(私の経験)を紹介します。笑
勉強する理学療法士 〜体験談〜
私が理学療法士2〜3年目の当時はヤル気満ち溢れ、よく勉強していました。
その時の心境や勉強意欲が異様に高かった理由を紹介します。
なんだか「私」の治療で効果が出ている
必ずしも自分の治療が有効であったという確証があったわけではありませんが、自分の担当患者が良くなっていくことを実感できたことが大きかったですね。
いま思えば、急性期〜回復期に従事していましたし、組織治癒など病理学・生理学的にも回復過程の時期だったからかもしれません。
疑問が解決したときの喜びがクセになる
どちらかといえば私はマネジメントや教員に興味が強く、患者と向き合うというより本とにらめっこすることの方が好きでした。
ただ、その中でもやはり担当患者の機能障害と鉢合わせしてわからない▶︎自宅で教科書を広げ障害の理由がわかる。
そのときの私は、なるほど!という達成感というか喜びというか、そんな気分が心地よいと感じることで勉強時間は増えていきました。
疑問▶︎解決▶︎疑問の好循環にハマる
その結果、好循環が生まれます。
疑問が解決につながり、ただその解決が新たな疑問を呼ぶ・・・みたいな。
ただただ、面白い!と感じて夜中まで黙々と勉強する日もたびたびありました。
先輩・後輩に認められたい
もうひとつ自分にとって大事なモチベーションとなっていたのが、「認められたい」という承認欲求です。
自分自身、子供の頃から「すごい人になりたい」という欲求が強い方だったと思います。
中学や高校の時の職業適正を計る自己分析でも「地位や名声を得たい」が常に上位に入っていました。
おそらくそういった気持ちと同じなのですが、周りからすごい人と思われたいという理由で知識をもっとつけないと・・・というモチベーションになっていました。
役職に上がって給料アップしたい
最終的には、やはり「金」です。笑
さきほども言いましたが、どちらかといえばマネジメントなどがやりたくてお金も欲しい。
→役職になれば良いじゃん!!という考え。笑
そのためには、周りから認められることが必要であって、臨床スキルもその1つ。
結局、勉強する動機なんて人それぞれです。
きれいごとだけでなく、人間なんですから本音は人それぞれであってよし。
勉強しない理学療法士 〜体験談〜
理学療法士1年目と4〜5年目の頃は、勉強を全くしていない暗黒期です。笑
理由としては、まず1年目の当時は理学療法士をやめたかったから。
別の道(夢)があり、理学療法士としてのモチベーションはほぼ皆無。
4〜5年目の頃は、結局人生はお金でしょ?という考えに至り理学療法士以外で稼ぐことを考えなければいけないなと。
勉強しても給料上がりません
結局、ここ1番ネックな部分ですよね。
理学療法士に不安を感じたり、モチベーションが上がらない人ほど強く感じているのではないでしょうか。
開業権があるわけでもないし、毎年数千円の昇給のみ。
かろうじて訪問看護ステーションに勤務すればインセンティブという名の歩合制はありますが、それでも年収は500万〜600万円くらいがほぼ上限。
逆にいえば勉強しようが、勉強しまいが皆一緒の給料ってことです。
勉強しない方がラクではありますよね。
勉強すればするほど出費は増えます
そして勉強しようとすればするほど、出費はかさみ貧乏人に。
この辺りの常識が変わるだけでも、多くの理学療法士が救われると思うのは私だけなのか?
まず専門書が高い。
1冊5,000円〜10,000円は普通。
なんなら5,000円切れば安く感じるが、これは完全に「普通」がマトモじゃないですよ。
次に講習会費用が高い。
コロナ禍でオンライン講習会が増えて3,000円前後の費用になったのは神。
これまでの対面式講習会では相場が10,000円前後。
いやいや、特に若手の薄給理学療法士にそれは酷だと思いませんか?
講習会で言ってることがわかりません
きわめつけは(これは完全に自分の問題なのかもしれませんが)後々振り返ってみると講習会で身に付いたことがない。笑
これではただの浪費です・・・。
それを繰り返していくうちに、「講習会行くの無駄じゃん」と思うようになってしまう私。
勉強しても「私」の治療の結果かわかりません
ズバリ、なぜ良くなったのかわかりません!!
いまではどの病院でも当たり前かもしれませんが、チーム制で治療にあたることが多いと思います。
主担当は私でも、私以外の理学療法士が治療を担当することがあるために「私」の治療で結果が出ているのかどうか疑いしかありません。
その結果、「私」じゃなくてもいいやとも思えるし、何より理学療法士が楽しくないと感じるように。
そもそも勉強方法がわかりません
純粋に、こんな疑問を持ったことありませんか?
私はあります。
教科書を1から10まで読むことが良いのか、担当症例の疑問を1つずつ解決していくのか。
まあ、どっちも正解であり不正解かもしれません。
とりあえず、効率的な勉強方法すらよくわからず、ただダラダラと教科書を見つめる時間がなんとも苦痛でした。
ちなみに私の経験としては、
- 症例報告をつくる
- 勉強会資料をつくる
この2つがおすすめです。
まとめ
以上の理由で、猛烈に勉強した時期とほとんど勉強しなかった時期の両方を経験した私の体験談でした。
これらをふまえて伝えたいことは、「環境を変えることが大事」だということです。
いまの職場で臨床の疑問の解決がなかなかできないのであれば楽しさはわかりません。
まずは周りに相談してみることがベスト。
周囲があまり頼りにならないのであれば、別の手を。
実際、経験談として語れることは周囲の人間の理学療法に対する熱意は少なからず自分にも伝染するということです。
仕事に対してルーズな環境で育てば、どこかでツケが回ってきます。
今の職場で成長できている実感がなければ転職。
転職で分野(整形外科▶︎脳卒中関連など)を変えることが有効かもしれないですし、治療時期(急性期・回復期・生活期)を変えてみる方法もあります。
特に転職は職場環境や福利厚生にばかり目がいきがちですが、自分の人生を変えてくれる「良い出会い」もありますよ。
4度の転職をした私が心の底から感じていることです。
やはり「誰と過ごすか」「誰と出会うか」が人生のキーポイントだと思います。
一緒に勉強できる人、お互いに高め合うことができる同僚を探しだしてスキルアップすることが大切です。