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リバース型人工関節のリハビリ【まとめ】

 

【ブログ管理人】理学療法士のイマリ(@imari_yy)です。

 

肩関節といえば、腱板断裂や肩関節周囲炎、投球肩のリハビリテーションを思い浮かべると思います。

対して、肩の人工関節置換術を思い浮かべる人は比較的少ないのではないでしょうか?

そこで、今回は肩の人工関節置換術のリハビリテーションをおさらいです。

リバース型人工肩関節(RSA)を中心にまとめてみました。

 

 

人工関節の種類や特性

 

肩関節の人工関節手術は3つに分類されます。

 

  1. 人工骨頭置換術(HA)
  2. 人工関節全置換術(TSA)
  3. リバース型人工肩関節全置換術(RSA)

 

この先は、略称で記載するのであしからず!!

 

リバース型(RSA)は2014年頃に導入されたため比較的新しい手術方法と言えますね。

いまのところ、日本整形外科学会の規定で執刀できる医師が限られているようで働く場所・環境によっては関わるリバース型(RSA)の症例と関わる理学療法士も多くはないかもしれません。

 

人工肩関節の適応としては、下記のような理由が当てはまります。

  • 高度な肩関節の変形
  • 激しい疼痛が生じている
  • 上腕骨近位端骨折が高度な場合
  • 上腕骨頭壊死
  • 修復が難しい広範囲の腱板断裂(偽性麻痺)など

 

人工骨頭置換(HA)

言葉の通り、上腕骨頭のみを置換する手術です。

①standard  anatomic  head

適応:上腕骨頭に限定した変形性関節症(OA)や骨頭壊死、骨頭壊死の可能性の高い上腕骨近位端骨折など

②extended  coverage  head

適応:若年者で骨頭の球心位が保たれていて90°以上の自動屈曲が可能・・・など、かなり限定された症例

 

注意点

手術にあたって肩甲下筋腱を一旦、切り離すため最初の〜6週間は肩関節の伸展や外旋(骨頭が前方へ偏位する動き)の積極的な運動は控える。

 

人工肩関節全置換術(TSA)

肩甲骨の関節窩と上腕骨頭の両方を人工に置換します。

 

適応:腱板機能に問題がない状態の上腕骨頭と関節窩の変形性関節症(OA)

 

TSAは「非拘束型」と手術です。

 

つまり、手術後の肩関節の安定性は主に棘上筋などに代表される腱板筋群によって保証しなければなりません。

 

ここで念頭に置いておくべきこととして【loosning(ルーズニング=ゆるみ)】と【rocking-horse現象】があります。

腱板機能が低下し関節の安定性が悪い状態(前後不安定性)があると関節窩側のコンポーネントのルーズニング(ゆるみ)が起こる可能性があります。

術後の理学療法では、ルーズニング(ゆるみ)が起きないよう、腱板機能の強化は必須です。

 

注意点

HAと同様に手術にあたって肩甲下筋腱を一旦、切り離すため最初の〜6週間は肩関節の伸展や外旋(骨頭が前方へ偏位する動き)の積極的な運動は控える。

 

リバース型人工肩関節全置換術(RSA)

本題のリバース型(RSA)は「半拘束型」の手術です。

 

適応:

  • 70歳以上の高齢者
  • 偽性麻痺などが生じている広範囲な腱板断裂
  • 腱板断裂性肩関節症
  • 高度な骨折

 

この手術は「三角筋」の機能が非常に大事になるため、三角筋が上手く機能しない例(腋窩神経麻痺など)では手術そのものが禁忌となりうる可能性があります。

注意すべき点としては、合併症(肩峰骨折、脱臼の報告)です。

 

術後の脱臼は1〜4%程度、多くの場合は術後12週間以内に起こるようです。

 

人工肩関節のバイオメカニクス

 

ここからはリバース型人工肩関節(RSA)に関して進めていきます。

 

日本では主に5機種が使用されているようで、「In-layタイプ」と「On-layタイプ」の2種類に分けられます。

 

In-layタイプ

回転中心を内下方化する

 

メリット

▶︎三角筋のレバーアームが増加

▶︎挙上時の三角筋の効率UP

 

デメリット

  • scapular  notchを起こしやすい(上腕骨側の内側と肩甲骨頸部が衝突する)
  • 三角筋が下方へ伸張されやすいため三角筋の起始部に過負荷が加わる
    ▶︎肩峰骨折を引き起こす

 

 

On-layタイプ

回転中心の外方化または上腕骨軸を外方化

要するに、回転中心を解剖学的な位置に近づけるため生理的な三角筋の緊張が得られるというメリットがある。

 

メリット

腱板が残存していれば適切な緊張が得られて回旋力が期待できる。

大結節が温存されているため三角筋で被われることで挙上時の骨頭上方偏位を抑制できる。

外方化による三角筋のレバーアーム増加により圧縮力による関節窩側のルーズニング抑制にも働く。

 

 

デメリット

大結節の温存は、肩峰下インピンジメントを起こす可能性。

 

 

リバース型人工肩関節全置換術(RSA)の理学療法

 

可能であれば執刀医に、術後のプロトコル(すでに準備されていればそれを確認)と使用した機種(In-layタイプかOn-layタイプ)について確認しましょう。

 

  1. 関節保護期
  2. 可動域拡大期
  3. 総合的肩関節機能獲得期
  4. ホームエクササイズ期

 

1. 関節保護期(1〜6週)

三角筋の緊張緩和や軟部組織の修復を目的に3週間程度の外転装具による固定期間。
RSAは腱板による関節の安定性が得られないため脱臼に要注意。
脱臼肢位は「伸展・内転・内旋」=結帯動作

2.可動域拡大期(7〜9週)

肩関節 内外旋運動(抵抗)開始。
重力除去位での屈曲(側臥位)、外転(背臥位)などの運動から徐々に抗重力位での運動へ。

 

3.総合的肩関節機能獲得期(10〜12週)

肩甲骨周囲筋・三角筋の協調的な動きを意識した筋力強化やADL訓練を行う。
必要以上の筋力強化は肩峰骨折の可能性も念頭に置いておく。

 

4.ホームエクササイズ期((13週〜)

引き続き肩甲骨の可動性維持や挙上・内転運動などの肩甲胸郭関節の機能向上を図るホームエクササイズを指導する。

 

 

まとめ

 

肩関節の人工関節置換術について基本的な理学療法の知識についておさらいしました。

リバース型人工肩関節は股関節や膝関節の人工関節ほど多くはありませんが、それゆえにリハビリについて迷うこともあるのではないでしょうか。

 

今後、RSAの経験や新しい情報があれば随時アップデートしていきます。

  • この記事を書いた人

イマリ

【資格】脳卒中認定理学療法士/運動器認定理学療法士/中級障がい者スポーツ指導員/ 【経歴】総合病院▶︎回復期病院▶︎訪問看護ステーション▶︎訪問看護ステーション▶︎整形外科クリニック/合計4度の転職経験/

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