新卒で理学療法士業界に飛び込んでみたものの、最初は上手くいかないことばかりで理学療法に難渋することも多いです。
私自身も同じような経験があります。
そんな状況で臨床経験1〜2年目の時期には「何か強み(武器)を持ちたい!」と思っていました。
しかし、検索方法が悪かったのか超代表的な「ボバース概念」や「PNF」、徒手療法では「メイトランド」や「カルテンボーン」くらいしか目に止まりませんでした。
年数を重ねるうちに講習会や周囲からの口コミでいろいろな手技・コンセプトがあることを知ったわけです。
今後、貪欲にスキルアップを目指す若手理学療法士向けにおすすめできる運動系に関わる理学療法手技・コンセプトや+αで取得したい資格についてまとめました。
自分にあった環境、将来の方向性を見据えながら、ぜひ参考にしてください。
理学療法士のイマリ(@imari_yy)です。
過去、転職4回(うち2回は転職サイト活用)を経験。
MSIアプローチ
こんな方におすすめ
- 急性期〜生活期(外来)まで
- 特におすすめは整形外科クリニック(外来・生活期)
- 運動機能評価や患者教育について理解を深めたいセラピスト
参考書籍は運動機能障害症候群のマネジメントとその続編です。
アメリカのシャーリー・A・サーマン先生が提唱する運動機能障害に関する目からウロコのアプローチです。
特別な手技を学ぶというよりも、どちらかと言えば「考え方」をしっかり学ぶことができることが特徴です。
英語ができる方であればワシントン大学のMSIに関するリンクまたはネクサスモーション(大阪)にリンクが掲載されています。
Nexus MOTION(ネクサスモーション)では月に1度のオンライン講習会であるマンスリーコースなどが用意されています。
MSIについて学びを深めたいのであれば、ぜひおすすめです。
日本で学ぶのであれば参考書籍とあわせて動画学習が効率的です。
個人的におすすめしたいオンライン動画配信サービスであるリハオンデマンドです。
- LIVEセミナー
- LIVEセミナーのアーカイブ(復習動画)
- いつでも観れるeラーニング動画
- ブログ
- メルマガ
以上のコンテンツが月額550円/年額5,500円です。
その辺の医学書を1冊買うより安い・・・。
ちなみに初回14日間は無料。
個人的におすすめのコンセプトの1つであるMSIアプローチのアーカイブ動画もあります。
教科書だけでは理解しづらい内容は動画で理解を深めることができます。
(MSIアプローチについては鈴木先生・加藤先生の講義を参考に)
理学療法士・作業療法士向けのオンライン動画配信サービスを利用するのであればリハオンデマンドは超優秀だと思います。
統合システムモデル(ISM)
こんな方におすすめ
- 特におすすめは整形外科クリニック(外来・生活期)
- 運動機能評価や患者教育について学びたいセラピスト
- 骨盤帯・胸郭について理解を深めたい
- 妊娠と出産にかかわるウィメンズヘルス領域を学びたい
参考書籍は「骨盤帯」と「胸郭統合アプローチ」の2冊です。
カナダの理学療法士であるDiane Lee(ダイアン・リー)先生が提唱する統合システムモデルは非常に有益と感じます。
講習会の受講は実現できていない立場ですが、書籍を読ませていただいた個人の感想をほんの少しだけ紹介。
- 問診から始まる評価、仮説立案、治療の流れ
当たり前だけど臨床でなかなかできていないな、と我に返ることが多い - 統合システムモデルはわかりやすい
- 第4章の冒頭にある「盲人と象」は良い意味で胸に刺さりました
特定のアプローチ方法、手技ではなく「考え方」や「理学療法の進め方」に関して非常に参考になりますよ。
もちろん、胸郭・骨盤帯に関する情報も役立ちます。

コロナ収束後に期待したいと思います。
2014年に日本で開催されたISMの講習会の様子が動画配信で見ることができます。
Learn with Dian Lee(外部サイト)で$100(約11,000円前後)です。
英語ができる方であれば、その他にも有料(一部無料)の講義動画が多数ありますのでチェックすると良いですよ。
ボバース・コンセプト
こんな方におすすめ
- 急性期〜生活期全般におすすめ
- 特に脳卒中などの中枢神経疾患にかかわるセラピスト
ボバースコンセプトは、中枢神経系の損傷による、機能あるいは運動・姿勢制御の障害を持つ患者に対する評価と治療のための、問題解決型アプローチである。
ボバース・コンセプトは英国のボバース夫妻によって1940年代から提唱された、脳性まひなどの中枢神経系疾患がある子どもや成人の治療のための考え方とされています。
現在では脳性麻痺・中枢神経系疾患に限らず、あらゆる患者がかかえる問題(障害)を解決するために用いられる方法であることは間違いありません。
最近はエビデンスが重要視されていますよね。
ボバース・コンセプトはエビデンスとして証明しづらい部分があることは事実だと思います。
そういった影響もあるのか不明ですが、ボバース・コンセプトをあまり好ましくないものとして誤解しているセラピストが少なからずいると思います。
必ずしも「エビデンスが高い=良い理学療法」とは言えず患者の状態・目標などを考慮して行うべきであり、仮にエビデンスとして証明されていなくてもその対象者にとっては有効な理学療法であれば問題ないでしょう。
結論として、何が言いたいのかというと「理学療法士としての実践能力を高める、問題解決能力を高めるために非常に有益なコンセプトだ」ということです。
講習会等の情報はコチラ(外部リンク)で確認できます。
BiNI Approach(バイニーアプローチ)
こんな方におすすめ
- 身体運動学や神経科学などに関する知識を整理したい
- 整形外科、中枢神経疾患など問わずに「運動」について見つめ直したい
地球上で一様に与えられている力学的法則に立脚し、身体運動学そのものを自己組織的に生成される運動として捉え、バイオメカニクスの観点から観察・解説できる身体運動に対して、神経科学・発生学・非線形力学・運動器連結を含む椛造・人の左右特異性・感覚入力位 置特異性などの観点と関連性を持たせながら統合的に解明したものを、「統合的連動生成概念」とした。
理学療法・作業療法のための実践編 BiNI Approach 運動の成り立ちから導く、治療をシンプルにする法則性より引用
バイニーアプローチは疾患問わずに役立つ知識を学ぶことができます。
私自身は最初、神経系に特化したアプローチかなとイメージしていましたが、案外そうでもなさそうです。
近年は整形外科疾患であっても脳科学を踏まえた介入が必要であることはもはや常識です。
逆に脳卒中患者もまた、加齢に伴う慢性疼痛や退行変性疾患を有する「重複障害」を抱えているケースは多いです。
そのような中でも、まだまだ整形系、神経系、内科系などいずれかに偏った知識で理学療法を展開するセラピストも多いのではないでしょうか。
そういったセラピストを脱却したいという方は、1度確認してみるのも良いですよ。
講習会等の情報はコチラ(外部リンク)からチェックできますよ。
環境適応
こんな方におすすめ
- 脳卒中などの中枢神経疾患にかかわるセラピスト
- ボバース・コンセプトとあわせて、より深くスキルを高めたいセラピスト
環境適応は、理論的・技術的な部分についてはボバース・コンセプトに基づいたものとされています。
ADLとの関わりが深い作業療法士の方が適正としてはあっているのかもしれませんが、もちろん理学療法士にも役立つスキルであることは間違いないでしょう。
環境適応講習会では、環境・課題・個体間の相互作用に焦点を当てた中枢神経系障害に対する治療的アプローチを講義と実技を通じて紹介します。
Aコース(平面・移動空間への適応)、Bコース(治療実践)、Cコース(洗体・更衣)、Dコース(食事)、Eコース(Activity)の5コースを全国で開催しています。
環境適応講習会より引用
PNF
こんな方におすすめ
- 特殊なテクニックとして自分の強みとなる武器を見つけたい
- 中枢神経疾患にかかわるセラピスト
- アスリートのパフォーマンスアップやコンディショニングにかかわるセラピスト
PNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)=固有受容性神経筋促通法は治療上の1つの概念であり、原理でもあるとされています。
PNFの歴史は古く、1940年代から存在します。
元々は脊髄性小児麻痺(ポリオ)と多発性硬化症の患者の治療に使われていたようですが、現在では幅広い対象者に効果的な治療法の1つとして知られています。
習得にはかなりの時間とお金がかかりますが、技術をものにできれば相当な強みになることは間違いありません。
ドイツ徒手医学
こんな方におすすめ
- 整形外科領域にかかわるすべてのセラピスト
- 特に新人〜若手セラピストにぴったり
ドイツ徒手医学は特に新卒〜若手のセラピストにぴったりです。
私も途中までコース受講済みですが、早めにコースを受講すればよかったと後悔しています。
コースの概要としては特別な手技を学ぶというよりも基礎をしっかり固める、というイメージですね。
ドイツ徒手医学は数多くの徒手療法のなかで唯一「医学」として体系づけられたものです。
信頼度も高く、おすすめですよ。
コースの受講を検討している方はコチラ(外部リンク)で詳細を確認できます。
Spain Dynamics療法
こんな方におすすめ
- 慢性疼痛に悩む患者の理学療法が上手くいかない
- 整形外科疾患に限らず中枢神経系疾患に関わるセラピストにも
主に慢性疼痛に関する理学療法の展開について学ぶことができます。
慢性疼痛の場合、例えば膝が痛いという患者を担当した際に「膝」という局所のみに着目しても痛みは改善しないことをよく経験すると思います。
隣接関節の影響はもちろんですが、上半身の姿勢・重心との関係性、物理学の法則に則った考え方を整理しておくことが重要なヒントになります。
ざっくりとした例えですが、このような視点で理学療法を行うことが重要であることが学べますよ。
Spain Dynamics療法の詳細や講習会についてはコチラ(外部リンク)から確認できますよ。
ヤンダアプローチ・DNS
こんな方におすすめ
- 徒手理学療法のスキルを高めたい
- 発達運動学や神経生理学の知識を高めたい
- 外国の著名な講師による学びを得たい
DNSとは発達運動学・神経生理学側面を基盤にした考え方、アプローチ法です。
DNS は日本で長年に渡って教育活動が行われているボイタ法をはじめ、ヤンダ法、レベット法など優れた治療者により生まれた徒手的医学プラハスクールの知識を総括して確立された運動システムの発達運動学・神経生理学側面を基本としています。
講習会のコースはA/B/Cの3パート+αで、その中にヤンダアプローチについても(おそらく不定期ですが)開催されています。
講習会の費用はなかなか高額ですが、理学療法士協会会員であれば申込のタイミングにもよりますが多少減額していただけるようです。
MTI Tokyoが主催する講習会についてより詳細に知りたい方はコチラ(外部リンク)を参考にしてください。
NSCA-CPT/NSCA-CSCS
こんな方におすすめ
- アスリートに関わりたい
- パーソナルトレーナーとして働きたい
世界的にも有名で信頼あるトレーナー資格です。
NSCAとは団体名のことでハイフンの後に並ぶCPTは比較的受験資格も緩く、取得しやすいです。
CSCSを受験するためには4年制大学の卒業(学士取得)などの条件があり、最終学歴が3年制専門学校卒業の時点で受験すらできません。
将来的にパーソナルトレーナーとして活動を考えている場合、付加価値を高めるためにも取得を検討してはいかがでしょうか?
障がい者スポーツ指導員・障がい者スポーツトレーナー
こんな方におすすめ
- 障がい者スポーツに関わりたい
- 障がい者スポーツトレーナーとしてパラスポーツアスリートを支援したい
障がい者スポーツは年々知名度や人気が高まってきていますね。
そのような中でも理学療法士は身体に障害を抱える人々に対して、専門性をもった資格でありいわばプロです。
そのような専門知識を活かして、障がい者スポーツを広めてたい・支援したいという方にぴったりの資格です。
理学療法士協会では年に1-2度(2020年〜2021年時点)、障がい者スポーツ指導員講習会を開催しています。
講習会に参加し、条件をクリアすることで初級を飛び越して「中級障がい者スポーツ指導員」としての資格を取得することが可能です。
障がい者スポーツトレーナーになるためには、さらに実績などの厳しい条件をクリアすることが必要です。
公益財団法人日本パラスポーツ協会で講習会や指導員・スポーツトレーナーについての情報が確認できます。
アスレティックトレーナー(AT)
こんな方におすすめ
- スポーツ領域に関わりたい
- アスリートの傷害予防や復帰に強みを持ちたい
スポーツ領域に関わるセラピストであれば、ほぼ知らない人はいないといっても過言ではない定番の資格です。
アスリートの外傷発生時などに応急処置をしたり競技復帰に向けたサポートを行うトレーナーの資格です。
必ずしも学校で学ぶことが必要ではありませんが、現実的にはAT養成校で学び資格取得を目指す人が多い印象です。
インターネットで検索すれば、養成校情報などは数多く出てきます。
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